国内外で活躍する6作家の新作・初公開を含む作品を展示!
美術(ファイン・アート)にとらわれず、様々なジャンルのアーティストの表現活動に注目し、現在進行形のアートを紹介するシリーズ展「あざみ野コンテンポラリー」。その第6回目として、国内外で活躍するアーティスト6人(青山悟、斎藤玲児、友政麻理子、凌宗権、和田昌宏、 王坪)による展覧会を開催します。
現代の社会は、もう一つの選択をするのが困難な時代と言われています。あるいは、そもそも、もう一つの選択の可能性を見出すこと自体が困難を極めています。多くの国が資本主義の枠組みの中で経済活動を行っており、とりわけ昨今の新たな自由主義経済が極端な貧富の差を生んでいることは良く知られています。決して望ましい社会が形成されているわけではない一方、これに代わる社会の枠組みについて有効な手段を持てないのが実情です。まさに、もう一つの選択を見出すことができないのです。こうした社会の中で、表現活動もまた、社会構造の変化と無縁ではありません。人々が、表現の持つリアリティや、アクチュアリティに共感するのは、こうした閉塞感の強い社会の中で、そこに残されたもう一つの選択の可能性をアートの表現の中に見出すからにほかなりません。
青山悟は、刺繍という技法を使いながら、手工から工業化されていったこの技法と近代社会との関係性によって浮上する「新たに獲得されるもの」と「失われるもの」について、様々な側面から作品化を行ってきました。
また、斎藤玲児は、日常生活という見逃しがちな風景を丹念に掬い上げながら、写真と動画を一つの映像作品として編集し日常風景を再構成します。ここでは、データに過ぎないデジタルイメージが氾濫する現在、日常世界の観察者と、そこで取り上げられる視覚イメージとの指示対象関係が無効になっていることも改めて気づかせてくれます。
友政麻理子は、コミュニケーションにおいて生じる、小さな齟齬、亀裂に注目し、むしろそうしたある種の障害そのものを抽出することで、本来あるべき対話の姿を浮き彫りにさせます。
凌宗権の出品作「煙草と祖母」(映像作品)は、自身の故郷でもある祖母の住む中国山東省臨沂市の農村で撮影されました。過酷な生活を強いられる祖母の日常生活をとおして、格差社会の歪みを目の当たりにしながらもただその光景を受け入れるしかない無力感が伝わる一方、当事者の孫という立場を通してリアリティある視線の貫かれた作品となっています。
和田昌宏は、主に映像作品(あるいは映像インスタレーション)によって身辺の事柄を掘り起こしながら、一見繋がりのない事象の間に、人間の根源的な問いかけを見出してきました。
中国広西省に生まれた王坪は、中国美術学院在学中は手描きのアニメーションやショートフィルムを制作してきました。出品作は、王が両親を連れて旅に出た様子を撮ったロードムービーのような映像となっています。本来であれば楽しいはずのこの旅は、生まれてこの方「旅行」などしたことのない両親の戸惑いや慣れない場所へのフラストレーションも垣間見え、何よりも王の年齢からしてもまるで祖父母といっても良い高齢の両親への複雑な思いが幾つかのレイヤーとなって現れます。
このように、本展では、一見行き場のない社会の有り様に、声高ではないものの、しかし批評的立場を貫く、様々な表現を通じて、“もう一つの選択”の可能性を展覧します。




斎藤玲児 / #19 / 2015 / 5:57 / video より抜粋


和田昌宏 / KOBU (仮題) / 2015 / video installation「TERATOTERA - Encounter」展示風景 / photo:Hako Hosokawa

友政麻理子 / お父さんと食事 / 2000(茨城)/2008(金沢)
/2012(福島)/2013(台北)/2014(ブルキナファソ)
performance and video recording

友政麻理子 / カミフブキオンセン / 2006 / installation

王坪 / 毎次見面都像是告別 Every meeting seems parting
/ 2015 / 30 minutes / video

凌宗権 / 老煙頭 Grandma / 2015 / 26 minutes / video
青山悟 AOYAMA Satoru
1973 年東京生まれ。1998 年ロンドン大学ゴールドスミスカレッジテキスタイル卒業。2001 年シカゴ美術館付属美術大学大学院 ファイバー&マテリアル・スタディーズ修了。現在東京を拠点に活動。近年の主な展覧会に2015年「名もなき刺繍家たちに捧ぐ」ミヅマアートギャラリー(東京)、「タグチヒロシ・アートコレクション・パラダイムシフト:てくてく現代美術世界一周」岐阜県美術館(岐阜)、「高橋コレクション展-ミラー・ニューロン」東京オペラシティアートギャラリー(東京)など。2015 年9 月「六甲ミーツ・アート」(兵庫)に出品予定。
http://mizuma-art.co.jp/artist/0020/
斎藤玲児 SAITO Reiji
1987 年東京生まれ。2010 年武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業。主な個展に2013 年「#13」山手83(神奈川)。グループ展に2013 年「SLASH/09:回路の折り方を しかし、あとで突然、わかる道順を」the three konohana(大阪)、実家JIKKA(東京)。主な上映会に2014年「One Day Screening 斎藤玲児/戸田祥子」TANA Studio(神奈川)、「Ongoing 映像祭2014」Art Center Ongoing( 東京)、「COVERED TOKYO: Hikarie, 2014」渋谷ヒカリエ(東京)など。
http://reijisaito.com
友政麻理子 TOMOMASA Mariko
1981 年埼玉生まれ。東京芸術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。近年の主な個展に2013 年「與父親共餐」 寶藏巖國際藝術村, 創意小客廳, 尖蚪(台北、台湾)、2015 年「近づきすぎてはいけない-Have a meal with Father-」TALION GALLERY(東京)。グループ展に2014年「トーキョーストーリー2014 第2 期」トーキョーワンダーサイト本郷(東京)、「Between art and science 2014」IRFAK OASIS(ブルキナファソ)、ナポリ科学博物館(イタリア)など。2015 年7月「水と土の芸術祭」(新潟)に出品予定。あわせて、市民と「潟の夢映画祭」プロジェクトに取り組んでいる。
http://www.tomomasa.info/
凌宗権 LING Zongquan
1990 年中国山東省生まれ。2015 年中国美術学院(浙江省)クロスメディア専攻卒業。2013 年「光跡」インスタレーショングループ展、2014 年「ドミノ空間マルチメディアグループ展」天虹芸術センター、2015 年「中国美術学院卒業秀作展」中国美術学院歴史館/ 中国美術学院地下ギャラリーなど。
和田昌宏 WADA Masahiro
1977 年東京生まれ。1999 年多摩美術大学中退。2001 年東京都拝島の米軍ハウスにて”HOMEBASE” の企画・運営を開始。2004 年ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ ファイン・アート卒業。近年の主な個展に2013 年「RECORRIDO ARQUEOLOGICO #1(遺跡への小径 #1)」Art Center Ongoing(東京)。グループ展に2015 年「Invisible Energy」ST PAUL St Gallery One and Two(オークランド、ニュージーランド)、「TERATOTERA-Encounter」武蔵野芸能劇場(東京)など。
http://www.masahirowada.com/
王坪 WANG Ping
1992 年中国広西省生まれ。2015 年中国美術学院(浙江省)クロスメディア専攻卒業。2012 年「浙江美術館発生中」(パフォーマンス)、「画像の叙事と旅行」、インタラクティブ実験劇場「拷問」、2013 年「12-1」、2015 年「中国美術学院卒業秀作展」中国美術学院歴史館/ 中国美術学院地下ギャラリーなど。
コラム
当館主席学芸員、プログラム・ディレクター 天野太郎による今回の展覧会についてのエッセイが、
アートWEBマガジン「創造都市横浜」のコラム「VIA YOKOHAMA 天野太郎」に掲載されました。
下記リンクからご覧いただけます。
「もう一つの選択(AlternativeChoice)」、
または「サブライム(崇高)」についての覚書(2)
「あざみ野コンテンポラリーvol.6もう一つの選択」のエッセイに代えて
関連イベント
Talks トークイベント
オープニングトーク
中国人作家2名のアーティストトークを中心に行います。
10月17日(土) 14:00~15:30
※終了いたしました出演 凌宗権 王坪
青山悟 斎藤玲児 友政麻理子 和田昌宏
進行 天野太郎(当館主席学芸員)
会場 1Fエントランスロビー
定員 80名
※観覧無料 / 申込不要 / 日本語通訳あり
アーティストトーク#1
10月24日(土) 14:00~16:10
※終了いたしました出演 斎藤玲児 和田昌宏
会場 展示室1・2
※観覧無料 / 申込不要
アーティストトーク#2
11月3日(火・祝) 14:00~16:10
※終了いたしました出演 友政麻理子 青山悟
会場 展示室1・2
※観覧無料 / 申込不要
学芸員によるギャラリートーク
11月1日(日) / 11月7日(土) 各日14:00~14:45
※終了いたしました会場 展示室1・2
※参加無料 / 申込不要
Workshop ワークショップ
ワークショップ「刺繍作家・青山悟と油絵を描こう!」
青山悟 / About Painting / 2014-2015 / 紙にポリエステル糸で刺繍 / 各24.2×21.2cm(31点組)
/ タグチ・アートコレクション蔵
出品作家の青山悟さんと一緒に油絵を描きます。出来上がった作品を講評し、青山さんの出品予定作《About Painting》で採用されているものと同様、縦軸を保守的から急進的、横軸を個人的から社会的とした座標軸の中に位置づけていきます。楽しく絵を描きつつ、美術の独自の見方を体験してみましょう。
10月18日(日) 10:30~16:00(昼休憩を含む)
※終了いたしました講師 青山悟
会場 3階アトリエ
対象 中学生以上
定員 20名(要事前申込、応募多数の場合抽選)
料金 2,500円(材料費込)
※1歳6ヶ月~未就学児童の保育あり(予約制・有料)。
詳細はアートフォーラムあざみ野 子どもの部屋 (TEL:045-910-5724) までお問い合わせください。
Appreciation Programs 鑑賞プログラム
展覧会を体験しよう!「子どものための鑑賞会」
ワークショップをまじえながら展覧会を鑑賞します。
10月31日(土) 14:00~16:30
※終了いたしました会場 3Fアトリエ・展示室1・2
対象 小学3~6年生
定員 20名(要事前申込、応募多数の場合抽選)
締切 10月21日(水)必着
※参加無料
アートなピクニック
―視覚に障がいがある人とない人が共に楽しむ鑑賞会―
視覚に障がいがある人もない人も、共に見て語らいながら展覧会を楽しみませんか?
11月7日(土)10:00~12:30
※終了いたしました会場 展示室1・2
定員 視覚に障がいがある人10名
視覚に障がいのない人15名
(要事前申込、応募多数の場合抽選)
締切 10月28日(水)必着
※参加無料
※最寄のあざみ野駅までお迎えが必要な方は申込時にご相談ください。
※1歳6ヶ月~未就学児の保育あり(予約制・有料)。詳細はお問い合わせください。
Screening 上映会
友政麻理子 自主映画上映会
出品作家の友政麻理子さんが手がけた自主制作映画「トンネル」(30分)のほか、水と土の芸術祭「潟の夢映画祭」で上映された「潟夢」(25分30秒)、「Sudden OP」(7分)を上映します。3作品上映後には、作家本人によるアフタートークも予定。是非ご参加ください!
11月6日(金) 18:30 上映開始 (18:15 開場)
※終了いたしました会場 3Fアトリエ
※参加無料 / 申込不要
Interview 作家インタビュー
● Full text of interview of six artists…Downroad form here
Full English text of interview with artists(65KB)>>>