横浜市民ギャラリーあざみ野 | Yokohama Civic Art Gallery Azamino

デザイナー、ヘンリー・ドレイファスとポラロイド[Gallery on the WEB vol.63]

ランドカメラ・オートマティック100/ポラロイド・コーポレーション/1963年

ランドカメラ・オートマティック100/ポラロイド・コーポレーション/1963年
20世紀半ば、車や飛行機などの乗り物、生活工業製品等様々な機械が高機能化する中で、誰もが一目で操作方法がわかり、安全に使用できるようにするデザインの重要性が認識されていきました。アメリカのインダストリアル・デザイナー、ヘンリー・ドレイファス(1904-1972)は、「すべてのデザインの出発点を人間にするべきではないか」と考え、様々な人間の身体のサイズや動作のデータを収集し、そのデータを活用した人間工学(エルゴノミクス)に基づいたデザインを実践していきます。

デザインが製品に果たす役割を重視していたポラロイド社の創始者エドウィン・ランド(1909-1991)は、自社製品のデザインにドレイファスを起用します。ドレイファスのデザインチームとポラロイド社の研究者・デザイナー・製造エンジニアは連携し、1963年にランドカメラ・オートマティック100を市場に送り出します。

このインスタントカメラは、それまでのモデルの半分程の重量ながら、世界で初めて電子シャッターを搭載し、ピクチャーロール式だったフィルムをパック式にすることで装填や現像処理を簡単にするなど、画期的な機構を持つ製品でした。ドレイファスのデザイン上の関心は特に使いやすさの向上に注がれました。ボタンやレバーを操作しやすい形状にし、それぞれに番号を表示することによって初心者でも操作手順をわかりやすくするなど、使用者を中心に据えるドレイファスのデザインの考え方が強く反映されています。その後もドレイファスの事務所とポラロイド社との関係は続き、スウィンガー(1965年)、SX-70(1972年)など画期的でユニークな製品を生み出しました。

*情報誌『アートあざみ野 vol.68』(2024年9月発行)「Gallery on the Magazine vol.63」より転載
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