横浜市民ギャラリーあざみ野 | Yokohama Civic Art Gallery Azamino

ルイス・ハイン「炭鉱で働く子どもたち」[Gallery on the WEB vol.65]

炭鉱で働く子どもたち/ルイス・ハイン/1911年/ゼラチンシルバー・プリント

炭鉱で働く子どもたち/ルイス・ハイン/1911年/ゼラチンシルバー・プリント
「ドキュメンタリー写真」の黎明期の20世紀初頭、無名の人々に光をあてたルイス・ハイン(1874~1940)という写真家がいます。ハインは、社会革新主義者の拠点でもあったニューヨークのエシカル・カルチャー・スクール(倫理文化学校)で、教員として教材用に写真を撮ったり、教えたりする中で、徐々に、社会教育のための写真の可能性に気づきます。1904年にエリス島の移民収容所を撮影し、以後、写真家として、急速に近代化するアメリカ社会を底辺で支える人々の、労働や生活を写し続けました。1908~1918年に児童労働委員会の依頼でハインが撮影した、煤まみれで炭鉱で働く少年や、自分の体の数倍はある機械を動かす少女などの児童労働者の姿は、アメリカ社会に衝撃を与え、児童労働法の成立のきっかけとなりました。
ハインは、アメリカに来たばかりの移民や労働者階級の人々を、記録という枠組みに留まらず、尊厳ある人格として写し出しました。一方で、自分の仕事をソーシャル・ワークと位置づけ、写真を幻燈用スライドにして上映したり、複数の写真や文字を組み合わせたフォト・モンタージュを制作するなど、写真と社会をつなぐための様々な方法を模索しています。ハインの眼差しと試みは、社会問題の暴露という目的を超え、社会的なコミュニケーション・ツールとしての写真の可能性を、私たちに提示してくれます。

*情報誌『アートあざみ野 vol.24』(2012年7月10日発行)「Gallery on the Magazine vol.20」より転載
一覧ページへ戻る