横浜市民ギャラリーあざみ野 | Yokohama Civic Art Gallery Azamino

イーストマン・コダック社の広告[Gallery on the WEB vol.62]

コダックで物語をとどめよう/イーストマン・コダック・カンパニー/1924年

コダックで物語をとどめよう/イーストマン・コダック・カンパニー/1924年
1880年代に登場したロールフィルムは、軽量で感度(光に反応する性質)が高く、様々なサイズに加工がしやすいため、カメラも小型化・軽量化して手持ち撮影が可能になります。また、一度カメラに装填すれば多数の写真を撮影することができました。カメラが扱いやすくなったことにより、それまでもっぱら写真館でプロの写真家によって行われていた写真撮影を、アマチュアも日常生活の中で楽しめるようになります。

ロールフィルムを販売していたアメリカのイーストマン・コダック社は、アマチュア向けにボタンを押すだけで撮影できるシンプルな操作性の廉価なカメラを次々と発売しました。同社は新しい顧客層を開拓するために、子ども向け雑誌『ユースズ・コンパニオン(Youth’s Companion)』、家庭向け雑誌『コスモポリタン(Cosmopolitan)』など、一般の消費者が購読する様々な雑誌で広告を展開します。そこに掲載された広告には、子ども、旅をする女性、母親、高齢者など、新しい写真の担い手たちが登場し、日常空間、クリスマスなどの家庭内のイベント、キャンプなどのレジャー、旅先と、様々な場面で撮影に興じる姿が描かれています。

コダック社は広告の多くで、カメラの操作の簡単さやファッション性、撮影の楽しさをアピールする一方で、写真撮影の経験が無い人に日常のさりげない瞬間や記念日のイメージを残す新しい写真の使い方を伝えようとしました。1907年から使用された「Let Kodak Keep the Story(コダックで物語をとどめよう)」というコピーの通り、写真によって個人の物語を記録する、新しい写真との関わり方を提案しています。

*情報誌『アートあざみ野 vol.67』(2024年4月末発行)「Gallery on the Magazine vol.62」より転載
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