横浜市民ギャラリーあざみ野 | Yokohama Civic Art Gallery Azamino

ステレオ写真[横浜市所蔵カメラ・写真コレクション]

キーストーン・ヴュー・カンパニー出版
年代不詳

ステレオ写真
雲の上2マイル―富士山から10マイル離れた山中湖を望む、日本/キーストーン・ヴュー・カンパニー出版/ゼラチンシルバー・プリント
Two Miles Above the Clouds-From Fuji Toward Lake Yamanaka, Ten Miles Away, Japan/Keystone View Company/gelatin silver print
映画館の3D上映などで、すっかりお馴染みになった「立体視」が、視覚的な楽しみとして人々に広まったのは19世紀に遡ります。1838年に、イギリスの物理学者で発明家でもあるチャールズ・ホィートストーン(1802-1875)が、左右の目の視差を利用して、絵を立体的に見えるようにする立体視装置を発表しました。その翌年には、世界で最初の実用的な写真術・ダゲレオタイプがフランスで発表されます。当時のニュー・メディアである写真と立体視はすぐに結びつき、異なった位置から同じ対象を撮影した2枚の写真を組み合わせたステレオ写真が撮られるようになります。専用のヴュワーの進化や、焼き増し可能な湿板写真の普及によって、「すべての家庭にステレオスコープを」をスローガンに2年間に50万台もヴュワーを売り上げる機器メーカーや、ステレオ写真専門の出版社も現れ、立体視とステレオ写真は爆発的に拡がりました。
ステレオ写真の題材は、世界各地の風景や風俗、有名人のポートレート、政治や事件、複数枚組みにしたストーリー仕立てのコメディ、聖書をテーマにしたものなどバラエティに富んでいて、部屋でヴュワーをのぞくだけで、現地に行かなくても様々なイメージを見ることができる、現代のテレビのような存在でした。私たちの眼をも楽しませてくれるステレオ写真の数々は、人々の視覚への欲求が、写真のメディアとしてのあり方を、その黎明期から押し広げて来た様子を伝えています。
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