横浜市民ギャラリーあざみ野 | Yokohama Civic Art Gallery Azamino

サーカット・カメラ [Gallery on the WEB vol.55]

イーストマン・コダック・カンパニー、フォルマ―&シュウィング・ディヴィジョン/1915年頃

No.10 サーカット・カメラ
No.10 サーカット・カメラ/イーストマン・コダック・カンパニー、フォルマ―&シュウィング・ディヴィジョン/1915年頃
 人の眼が周囲を見渡すように、一般的なカメラより広い画角(写せる範囲の角度)を撮影するための特殊な機構を持ったカメラをパノラマカメラといいます。パノラマカメラには、超広角レンズを付ける、レンズを首振り式にするなど、幾つかの方式がありますが、最大の画角を撮影できる方式は、カメラ本体が回転することによって360度まで撮影できるパノラマカメラです。1904年にロチェスター・パノラミック・カンパニーから発売され、後にイーストマン・コダック社などで製造されたサーカット・カメラはその一つです。

 サーカット・カメラは、ゼンマイを巻いてボタンを押すと、シャッターが開くと同時にモーターが稼働し、本体下部に取り付けた歯車と三脚上部の歯車が噛み合って、カメラ本体が水平方向に回転します。回転と連動して中のロールフィルムも自動で送られ、フィルム前の縦長の細いスリットから露光します。歯車を交換すると、回転速度を調節できます。

 このカメラは1950年頃まで販売され、主にプロの写真家によって、風景や、広い会場で行われるスポーツの試合の撮影など、幅広く活用されました。大人数のポートレイトの撮影にも使用され、当館の収蔵品にも170名以上もの人物がおさめられた横長の集合写真が残されています。

*情報誌『アートあざみ野 vol.60』(2021年12月末発行)「Gallery on the Magazine vol.55」より転載


ハーバード大学同窓会15周年、プリマス、1915年6月21日(No.8 サーカット・カメラで撮影/F・A・フレーゼル/1915年/ゼラチン・シルバー・プリント
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