横浜市民ギャラリーあざみ野 | Yokohama Civic Art Gallery Azamino

No.3A オートグラフィック・コダック・スペシャル [Gallery on the WEB vol.58]

イーストマン・コダック・カンパニー/1916年

No. 3A オートグラフィック・コダック・スペシャル/イーストマン・コダック・カンパニー/1916年
 写真が生まれた19世紀、金属板やガラス板を素材とした感光材料が使用されていた時代には、「ピントグラス」と呼ばれる磨りガラスをカメラ後部にセットして、そこに映った像を確認しながら焦点(ピント)を合わせた後、感光材料を入れ替えて撮影を行っていました。

 1890年代にロールフィルムが普及すると、感光材料を1枚1枚入れ替える必要がなくなり、フィルムを巻き取れば連続して撮影ができるようになりました。感光材料の進化によりカメラの機動性が高まるなかで、撮影するたびにピントグラスと感光材料を入れ替えずに行える焦点調節の方法が模索されます。そこでカメラに取り入れられたのが、被写体とレンズの距離を計る距離計です。距離計は三角測量の原理を元に、二つの位置から被写体を見た時に生じる視差を利用して距離を計ります。

 1916年にイーストマン・コダック社は、世界で初めて焦点調節機構と連動する距離計を装備したカメラ、No.3A コダック・オートグラフィック・スペシャルを発売しました。このカメラはレンズ下部に距離計が付き、側面の三層に分かれた覗き窓に映った三つの像を、ノブを回して合致させて、焦点調節を行います。ロールフィルム用の折り畳み式カメラで、手持ちで距離計を覗きながら撮影できる先駆的なカメラとなりました。

*情報誌『アートあざみ野 vol.63』(2022年12月末発行)「Gallery on the Magazine vol.58」より転載
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