横浜市民ギャラリーあざみ野 | Yokohama Civic Art Gallery Azamino

デュブロニ [Gallery on the WEB vol.59]

デュブロニ No.2/メゾン・デュブロニ/1864年頃

デュブロニ No.2/メゾン・デュブロニ/1864年頃
 写真の普及期に当たる19世紀半ば、当時の写真技術、コロディオン方式ガラス湿板写真は、ガラス板に薬品を塗布し、乾く前に撮影する必要がありました。そのため、写真家たちは、撮影場所に薬品や暗室を持ち込んで薬品処理を行っていました。
 
 暗室を持ち歩かずに撮影できるように、フランスのカメラ製作者ジュール・ブルダン(Jules Bourdin, 1832-1893)は、1864年にカメラ内部で薬品処理を行える独自の機構のカメラの特許を取得します。ブルダンの名前の文字を並べ替えてデュブロニ(Dubroni)と名付けられたこのカメラは、内部にガラスまたは陶製の容器が入っていて、中に液体を入れることができました。撮影時は、コロディオンを塗布したガラス板をカメラに入れて閉じ、上部の穴からピペットで硝酸銀溶液を注入し、ガラス板に感光性を持たせます。撮影後は、現像液等の注入と廃液を繰り返し、現像処理を行います。こうして、暗室に入ることなくガラスネガを作成するシステムになっています。

 サイズの異なる数種類のモデルが発売され、小型のモデルでは、カメラの背面の裏蓋を開けると、感光を防ぐ赤いガラス窓があり、カメラ内部の様子を確認することができました。撮影から現像して画像を得るまでのプロセスを、全てカメラ内部で行うという斬新なアイデアは、後のインスタントカメラの先駆的な製品となりました。

*情報誌『アートあざみ野 vol.64』(2023年4月末発行)「Gallery on the Magazine vol.59」より転載
デュブロニ No.2/メゾン・デュブロニ/1864年頃
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